
虫歯や歯周病で失ってしまった歯を補うために、インプラント を考えている方も多いはずです。
インプラントを入れれば、「もう虫歯や歯周病になる心配はない。」 と思ってはいませんか?
実は、正しいケアをしなければ、インプラント周囲炎 などのトラブルの原因になります。
そもそもインプラントとは、どのような特徴があるのかを知っていただき、健康なお口を保つためにも正しいケアのご紹介をします!
Contents
1. インプラントとは
「人の身体に埋め込む人工物」 のことをインプラント と言います。
歯科診療では、厳密には「デンタルインプラント」 と言いますが、歯科におけるインプラント治療が一般的になり、「インプラント」と呼ぶことが多くなっています。
(※以下、当サイトでも「インプラント」としています。)
インプラントは、歯を失った顎の骨にチタン製の人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、被せ物 をすることで、歯を補う方法です。
基本的には、3つ のパーツに分かれています。
・「インプラント体」 :顎の骨の中に埋め込まれる部分で、天然の歯で言う歯の根っこです。
・「アバットメント」 :インプラント体と人工歯を繋ぐ部分です。
・「上部構造」 :人工の歯です。
1-2 チタンが使われる理由
インプラント体部分の材質には、チタン または、チタン合金 を使用します。
チタンは、軽くて強く 、錆びにくい特徴 のある金属です。加えて、人体に対しても親和性が高いためインプラントに採用されています。もちろん、歯科だけでなくペースメーカーや骨を繋ぐボルトなどにもチタンが使用されています。
その特徴を詳しく見ていきましょう。
・金属アレルギーを起こしにくい
チタンは、空気に触れると表面に膜ができるため、金属アレルギーの原因でもある「金属イオン」 が溶けだすことが殆どありません。よって、他の金属に比べて金属アレルギーが起こりにくいです。心配であれば、インプラント治療を受ける前に、パッチテストを受けられることをおすすめします。
・顎の骨と強固に結びつく
骨と結合するという珍しい特徴を持っています。強固に顎の骨とインプラント体が結合すれば、天然の歯に劣ることなく快適に食事ができます。
以上のように、金属アレルギーを起こしにくく、顎の骨と強く結びついてくれるチタンは、インプラント治療では理想の素材です。
1-3 インプラントの治療方法
インプラントは、手術治療です。
1回法 と2回法 に分かれており、口腔内の状態や歯科医院によって方法は違います。
1回法 の場合、麻酔をして歯茎をめくり、顎の骨にドリルで穴を開けます。
インプラント体とアバットメントが一体型になったインプラントを埋めます。
2~6ヵ月程度、インプラントと骨がしっかりくっつくまで待ちます。
しっかりくっついたら、人工歯を装着します。
2回法 の場合、1次手術と2次手術があります。
まず1次手術 では、麻酔をして歯茎をめくり、顎の骨にドリルで穴を開けます。
インプラント体を埋め、専用の蓋をつけて、めくった歯茎を元に戻して縫合します。
2~6ヵ月程度、インプラントと骨がしっかりくっつくまで待ちます。
2次手術 は、麻酔をして歯茎をめくり、インプラントにアバットメントを付けていきます。
その後、2週間程度待ち、歯茎の状態が良くなったら、人工歯を装着します。
顎の骨の量が十分ある場合は、1回法が適用になります。必ずしも希望した方法で、インプラント手術が受けられる訳ではありませんのでご注意ください。
2. インプラント周囲炎とは
インプラント周囲炎 とは、インプラントに起こる歯周病のことです。
「インプラントを入れたから」 「人工の歯だから」 歯周病にはならないと思われている方も多いです。
しかし、歯周病は天然の歯だけに起こる病気ではないのです。確かに人工の歯なので、虫歯になるリスクはありませんが、油断していると歯周病 になってしまうのです。
インプラントの周りの歯茎に炎症が起きて、出血や腫れが見られます。
放置しておくと、炎症が広がり顎の骨が溶けて、インプラントがグラグラと動いてきます。
インプラント周囲炎 になると、せっかく外科手術までして入れたインプラントが抜けてしまうこともある恐ろしい病気です。
歯周病は、「お口の中のサイレントディジーズ」 とも呼ばれており、自分で気が付くことが難しい病気のひとつでもあります。インプラント周囲炎では、歯周病よりも自覚症状が少なく、かなり進行しないとグラグラと動きません。とても厄介なのです!
メリットも多くインプラントを入れれば快適に過ごせると思われがちです。
大切なのは、インプラントを入れることではなく、インプラントを入れた後のケア です。インプラントを入れたからと安心せずに、天然の歯と同じように正しいケア を行いましょう。
また、すでに重度の歯周病 になっている方はインプラントをすぐ入れることはおすすめできません 。インプラントを入れる前にも、定期的なクリーニング や歯周病治療 を行い口腔内の環境を健康に保っておくことが大切です。
さらに、インプラント周囲炎の恐ろしいところは、天然の歯で起こる歯周病よりも進行が速い病気 ということです。理由は、インプラントが人工物 だからです。
インプラントは、強度など物理的には天然の歯よりは優れていますが、細菌に対する抵抗力は弱い です。インプラント周囲炎の顎の骨が溶かされるスピードは、歯周病に比べて、なんと約10倍 速くなります。
3. インプラント周囲炎のセルフチェック
すでに、インプラント治療を終えており、以下の項目に該当するものが多い方は、インプラント周囲炎のリスクが高い可能性があります。セルフチェック してみましょう。
・歯磨き中に出血する
・歯茎から膿が出ている
・歯ぎしりをすると痛みを感じる
・喫煙者
・糖尿病
・インプラントがグラグラ動く
・定期的なメインテナンスに通っていない
当てはまる項目が多い方やインプラントで気になることがある場合は、自己判断せずに早めに歯医者に受診 することをおすすめします。
4. インプラント周囲炎の原因
インプラント周囲炎の原因は、歯垢や歯石の中にいる細菌 です。特に、毎日のお手入れが不十分で、歯垢などが蓄積 してしまうことで歯茎に炎症がおきます。
歯垢や歯石が溜まると、さらに汚れが付着しやすく悪循環になります。歯周病の原因になる細菌が増殖しやすい環境になり、歯茎だけでなく顎の骨 にも感染します。
インプラントを支えている顎の骨に感染すると、骨が溶けていき、インプラントが抜けてしまうこともあるのです。
主に、
・セルフケアが不十分
・定期的に歯科医院でメインテナンスを受けていない
・歯周病になっている
以上の原因が考えられます。
すべて、口腔内の細菌を増やす原因で、インプラント周囲炎のリスクが高いです。
5. 予防・対策
インプラント治療が終わっても、お口の中のメインテナンス を怠らないことが重要です。インプラントも他の天然の歯と同様に、お口の中で大切にしたいですよね。
人工物だからと安心せずに、インプラントに合うメインテナンス を行いましょう。
また、インプラント周囲炎 は、前段階として「インプラント周囲粘膜炎」 というインプラント周囲の歯茎のみに起こる炎症 があります。
インプラント周囲粘膜炎の段階で、気が付いて歯科医院でメインテナンス を受けることができれば、進行を止めることも可能です。
5-1 定期的にメインテナンスを受ける
インプラント部分だけでなく、口腔内を定期的にクリーニング することで、細菌の増殖を抑えることができます。
しかし、クリーニングといっても種類はさまざまです。実際に歯医者で行えるインプラントに対して行うクリーニング をご紹介します。
・5-1-1. スケーリング
専用の器具により、歯石や歯垢を取り除く クリーニングです。治療を目的としている場合は保険適用 でスケーリングが受けられます。見た目など審美目的の場合は、自費治療 になりますので注意しましょう。
歯石は、歯ブラシでは取ることができない ため、歯医者でのクリーニングが必要なのです。歯石を取らない限り表面がザラザラ して、さらに歯石が付きやすい 環境になります。
超音波や手用のスケーラーを使用して、歯の表面に付いている歯石や歯垢 を取ることができます。歯石や歯垢が多い方は、ヒヤッとした痛み(知覚過敏の症状) がでます。
インプラントがある方は、人工歯を外した状態で行う場合もあります。外した人工歯は、丸ごと超音波洗浄 をすることで、歯石や歯垢除去率 も上がります。
・5-1-2. PMTC
ホワイトエッセンスHP(https://www.whiteessence.com/より)
専門用語で、プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング の略PMTC は、歯面研磨のことです。
専用の器具に、ブラシやラバーカップを装着し、ペースを付けて歯を磨き上げます。歯石取りを行った後に、着色を落として、フッ素も塗布します。
歯医者によって値段はさまざまな自費の治療です。ただし、インプラント(チタン)はフッ素により腐食 することがあります。逆に、インプラント周囲炎になる恐れがあるため、インプラント周辺へのフッ素塗布は控えましょう 。
・5-1-3. ジェットパウダー洗浄
塩のパウダー を歯の表面に吹き付けて着色を落としていきます。PMTCと合わせて行うと効果的です。
ただし、インプラントと歯茎の隙間にパウダーが入ると歯茎を傷つけて炎症を起こす原因になります。これは、インプラントに限ったことではなく、天然の歯も同様です。
術者側のテクニックでも左右されますので、クリーニングを行ってもらう歯医者選びも重要ですね。
5-2. セルフケアの改善
歯ブラシだけでなくインプラント部には、清掃補助用具 をしようすることがおすすめです。今回は、中でもインプラントをきれいに長く保つため におすすめアイテムをご紹介します。
・5-2-1. デンタルフロス
デンタルフロス は、細いナイロンの糸を束ねたものです。歯と歯の間の歯垢や汚れを取り除くのに向いています。
糸の長さを調整することができる糸巻状になった、ホルダータイプや初めてでも使いやすい、柄が付いているタイプもあります。
インプラントの側面の汚れを落とすことができるため、歯垢除去率も歯ブラシのみより2割程度アップ します。
・5-2-2. スーパーフロス
ブリッジの人工歯部分の清掃によく使われるスーパーフロス 。デンタルフロスと似ていますが、初めから使いやすい長さ(40~50㎝)にカットされています。
また、フロスの両端がさらに細く硬く作られているため、歯とインプラントの隙間に通しやすいのが特徴です。
・5-2-3. ジェット水流洗浄
インプラントをたくさん入れているかたにおすすめの清掃用具 です。汚れの溜まっている部分に水をジェット噴射 させることで清掃します。
本数が多くインプラントの土台が繋がっている方は、歯茎とインプラントの隙間に汚れが溜まりやすいため効率よく汚れを落とします。
5-3. 歯磨き粉の選び方
インプラントの腐食を防ぐためにも、フッ素入りの歯磨き粉 を控えた方がよいです。フッ素が口の中で水素イオンと結合すると、「フッ酸」 という物質になり、インプラント体に使用されているチタンを腐食 してしまうからです。
これが原因で、インプラント周囲炎になる可能性もあるため、歯磨き粉選びにも注意しましょう。
5-4. 喫煙を見直す
喫煙者 の方が非喫煙者に比べてインプラント周囲炎のリスクが高い ことが分かっています。
たばこは、骨とインプラントが結合しようとする力を弱めてしまうからです。免疫力を低下させ、口腔内の感染症も増えるためインプラントの寿命も縮めます。
たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素 が歯茎の血流を悪くします。血流が悪くなると、栄養が行き届かなくなるため、骨や歯茎も弱く脆くなっていく のです。すると、顎の骨がインプラントを支えることができなくなり、抜けてしまうということもあります。
歯周病が進行している方やインプラントを入れている方は特に、たばこを控える ことが理想的です。
6. まとめ
インプラント周囲炎 は、気が付かないうちに進行していることがほとんどです。インプラントの治療をやり直さないといけない場合もあります。
せっかく何十万もかけて行うインプラント治療です。長くインプラントと付き合っていくためにも、毎日のセルフケア とメインテナンス が重要と分かりましたね。
また、定期健診やクリーニングは、事前にインプラントがあることも伝えておくと良いでしょう。しっかりと歯周病やインプラント周囲炎を改善したいのであれば、歯医者選び も重要です。クリーニングをする機関をお探しであれば、全国271医院に展開し、クリーニングの症例実績が146万件のホワイ トエッセンス も検討してみて下さい(※)。あなたに合うクリーニングを見つけて、健康で清潔感のある口元を目指しましょう!
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