睡眠中、気づかないうちにしてしまっている歯ぎしり 。いびきと同様に、睡眠中の歯ぎしりに悩んでいる方も多いんです。
今回の記事では、歯ぎしり の具体的な症状や原因 、自分でできるチェック項目 について解説しましょう。さらには歯ぎしりが体に与える悪影響、改善方法や対処方法についてもご紹介します。
「家族に歯ぎしりをしていると指摘される」 「どうにか改善したい!」 という方は、ぜひ参考にしていただけると幸いです。
Contents
歯ぎしりの症状は人によってさまざま
「歯ぎしり」 と聞くと、上下の歯をこすり合わせるような動作を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。もちろんそれも歯ぎしりなのですが、歯ぎしりの症状は他にもあるのです。
また、歯ぎしりというと眠っているとき限定だと思われがちですが、自分では気が付かないうちに日常生活の中で 歯ぎしりをしてしまっている方もいます。
主に以下の3つが、歯ぎしりによくみられる症状といわれています。
・歯をこすり合わせる動作
・歯を食いしばる動作
・歯をカチカチと鳴らす動作
これらの症状について、それぞれ詳しく解説しましょう。
歯をこすり合わせる「グラインディング」
最も「歯ぎしり」の印象が強いのが、歯をこすり合わせる動作 。これを「グラインディング」 といいます。歯ぎしりの中でも最もメジャーな症状で、多くの方々に見られます。
ギリギリ、ギシギシと歯をこすり合わせるので、一緒に寝ている家族などにも気づかれやすいといわれています。大きな音が鳴るので、家族の睡眠を阻害してしまうことも…。
また、上下の歯を強く食いしばった状態で歯をこすり合わせているので、歯に対するダメージがかなり大きい ともいわれています。歯の表面が削れることはもちろん、歯の根元に負担がかかってしまい、歯のぐらつきの原因になる可能性も。
歯を食いしばる「クレンチング」
歯を食いしばったり、強く噛みしめたりする動作を「クレンチング」 と呼びます。グラインディングのこすり合わせる動作がないバージョンと考えてよいでしょう。
スポーツ中や力仕事をする際に、歯をグッと噛みしめることがありますよね。そのようなときと同様に、寝ている間にも強い力で上下の歯を噛みしめてしまっている 状態です。
普段生活しているときの口の中の状態は、上下の歯が触れずに少し隙間がある状態が正常 です。普段から気づいたときに上下の歯が触れている場合、寝ているときもクレンチングをしている可能性があります。
歯をカチカチと鳴らす「タッピング」
睡眠中、上下の歯をカチカチと鳴らす「タッピング」 をする方もいます。症例数は少ないですが、あまり大きい音が鳴らないので気づいていない方が多いのかもしれません。
タッピングの場合は歯に大きな力が加わっているわけではないので、歯に与える影響はさほど大きくありません。とはいえ、グラインディングやクレンチングの原因となる可能性もあるので、改善するに越したことはないでしょう。
歯ぎしりの原因とは?
睡眠中、あるいは日常生活中に無意識 で起こってしまう歯ぎしり。その具体的な原因は、いまのところまだ解明されていません。
とはいえ、さまざまな要素が合わさって歯ぎしりが起きているといったことが分かっています。その要素として考えられるのが、主に以下の5つ です。
・ストレス
・歯並びや噛み合わせ
・日常的な食いしばりのクセ
・顎関節のすり減り
・飲酒や喫煙
これらについて、それぞれ詳しく解説しましょう。
1.ストレス
歯ぎしりの原因として、最も大きいといわれている要素がストレス です。ストレスは万病のもと といわれる通り、歯ぎしりにも影響があります。
体や心にストレスがかかると、全身の筋肉が緊張して肩こりや頭痛などを引き起こします。そういった機序と同様、口周りの筋肉にも緊張を引き起こして歯ぎしりの原因になっているのではないかといわれているのです。
2.歯並びや噛み合わせ
歯並びや噛み合わせが正常でない場合 、普段から口周りの筋肉に負担がかかっている可能性があります。そのため、睡眠時や日常生活でも無意識のうちに歯ぎしりをしてしまうことも。
噛み合わせがよくないことで変なところに力が入ってしまったり、一ヶ所だけに負担がかかってしまったりすることもあるようです。
3.日常的な食いしばりのクセ
もともと普段から噛みしめのクセ がある場合は、そのクセが寝ているときにも発動してしまっている可能性があります。食いしばりの状態を口周りの筋肉が覚えてしまって、無意識のうちに食いしばってしまうことも。
4.顎関節のすり減り
年齢を重ねるにつれて、顎関節 はだんだんとすり減ってきます。関節がすり減って平らになることで、顎関節の形状に合わせて歯の形も変化させようとして歯ぎしりを行うことも。
5.飲酒・喫煙
具体的な因果関係は証明されていませんが、飲酒や喫煙 が歯ぎしりの原因になっているのでは?と考える学者さんもいるようです。飲酒や喫煙は体に対してさまざまな悪影響を引き起こすので、歯ぎしりにも関係があるかもしれません。
寝ている間は気づけない…歯ぎしりのチェック項目10個
寝ているときの状態は自分では分からないので、歯ぎしりをしていても気づくのが遅れてしまうこともしばしば。ここでは、歯ぎしりをしているかどうかセルフチェック できる項目をご紹介します。
以下の10項目 に当てはまる数が多い方は、睡眠中に歯ぎしりをしている可能性が高いでしょう。
1. 集中しているときに上下の歯が当たっていたり、歯を食いしばっていたりする
2. 起床後、顎や頬の筋肉が緊張していたり、張っていたりする
3. 頬の内側や舌に歯の跡がついている
4. 家族に「歯ぎしりをしている」と指摘される
5. 歯がだんだんすり減ってきている
6. 肩こりや頭痛がひどい
7. 歯の根元にある歯茎や上顎の真ん中にコブができている
8. 歯の詰め物が取れやすい・割れることがある
9. 知覚過敏になってきた
10. 歯に亀裂が入っている
先述した通り、起きているときに噛みしめのクセがある場合は睡眠時も同じような動作を行っている可能性が高い です。また、起床後に口周りや全身に違和感 があったり、歯の跡 やコブ があったり場合は口内に力が加わっています。
長年歯ぎしりをしている場合は、歯のすり減りや知覚過敏、詰め物の割れや歯の亀裂が起こる可能性も高くなってくるでしょう。
歯ぎしりが体に与える悪影響
歯ぎしりの動作は、歯や口周辺に対してはもちろん、全身に悪影響 を与えてしまいます。歯ぎしりが体に与える悪影響として考えられているのは、主に以下の5つ 。
・歯が削れてしまう
・歯周病の悪化
・顎関節に負担がかかる
・頭痛や肩こり
・歯並びの変化
これらについて、それぞれ詳しく解説しましょう。
歯が削れてしまう
長年歯をこすり合わせてグラインディングをしてしまっていると、歯が合わさっている部分が削れてしまう 可能性があります。歯の表面にあるエナメル質が削れると、知覚過敏 になってしまうことも。
歯が短くなってきたと感じる方や、知覚過敏が悪化している方は歯ぎしりをしているかもしれません。
歯周病の悪化
グラインディング やクレンチング をしていると、歯茎に力が加わって負担がかかります。もともと歯周病で歯茎が弱っている方は、さらに症状が悪化してしまうことも。
熟れたトマトのような状態になった歯茎に力が加わると、いとも簡単に口内が崩壊してしまいます。歯周病の症状がある方 は、歯ぎしりにも要注意です。
顎関節に負担がかかる
歯ぎしりによって負担がかかるのは、歯や歯茎だけではありません。顎関節 にも負担がかかってしまうので、結果として顎関節症 になる恐れも。
口が開かなくなったり、口を開けるときに音が鳴ったりする場合は顎関節症の恐れがあります。
頭痛や肩こり
歯ぎしりは、慢性的な頭痛や肩こりの原因 になることがあります。あるいは、ストレスが頭痛や肩こり、歯ぎしりなど全ての原因であることも。
筋肉の緊張 は全身に悪影響を及ぼしますので、明確にストレスがある場合はなるべく取り除けるように環境を改善しましょう。
歯並びの変化
歯に負担がかかることによって、歯並びが変化 してしまう可能性があります。特に多い症状は、歯が垂直方向に沈んで短くなる、歯が前に押されて下顎や上顎の歯が前突するなど。
歯ぎしりによって歯並びが悪化すると、さらに噛み合わせが悪くなって歯ぎしりがひどくなる …という負のループに陥る可能性もあります。
歯ぎしりの改善方法・対処方法ってあるの?
体に対して様々な影響を与える歯ぎしり 。可能であれば、歯ぎしりを治療して体への負担を減らしたいものです。しかし、睡眠中に症状が起こることが多いので、現在でも治療による完治は難しいとされています。
歯ぎしりの治療は、歯を守ったり症状を軽減させたりする「対症療法」 が一般的。歯ぎしりの治療として一般的に行われているのは、主に以下の4つです。
・マウスピース(ナイトガード)
・噛み合わせの治療
・ボトックスや筋肉マッサージ
・日常生活で噛みしめが起こらないよう意識する
これらの方法について、詳しく解説しましょう。
マウスピース(ナイトガード)
歯ぎしりの治療としてよく行われているのは、マウスピースによる治療 です。歯科医院でマウスピースを作成し、夜寝るときのみ歯にはめます。夜だけ使用するマウスピースなので、ナイトガード と呼ばれることも多いです。
マウスピースを着用することによって、万が一歯ぎしりが起こっても歯がすり減らないように保護 してくれます。また、詰め物が取れたり割れたりすることも防ぐ役割も。
とはいえ、歯ぎしり自体が改善するわけではないので、歯のすり減りは守れても歯茎や顎関節への負担を軽減することは難しいのです。
噛み合わせの治療
噛み合わせだけが原因で歯ぎしりが起こっているとは考えにくいのですが、正しい噛み合わせになることで全身への悪影響は確実に減ります。普段から食事の際に違和感を覚えたり、上手く噛めなかったりしている場合は歯科医院で診てもらいましょう。
歯列矯正 を行うのが確実ですが、軽度の噛み合わせ不良であれば微調整で問題ないこともあります。
ボトックスや筋肉マッサージ
ボトックス とは、無毒化したボツリヌス菌を筋肉に注入することで筋肉の動きを弱める 治療方法です。ボトックスを咬筋に注入することで噛みしめる力を弱め、歯ぎしりの改善につなげます。
また、筋肉マッサージは凝り固まった筋肉をマッサージでほぐし、咬筋周辺をリラックスさせる働きがあります。ボトックスや筋肉マッサージは口周りの緊張を緩めるため、小顔効果もあるといわれています。
日常生活で噛みしめが起こらないよう意識する
意外と大切なのが、日常生活で噛みしめが起こらないよう意識すること 。ふと気づいたときに、上下の歯がくっついていたり噛みしめたりしていませんか?
家に張り紙を貼る、気づいたらメモをするなどといった方法も侮れません。こういった意識を繰り返すことによってクセがなくなり、睡眠中の歯ぎしりも軽減されることがあります。
歯ぎしりを改善したいなら歯科医院へ!
今回の記事では、歯ぎしりの 原因や体への悪影響、治療方法について詳しくご紹介しました。
歯ぎしりにはさまざまな種類がありますが、ハッキリとした原因は現在でも分かっていません。原因として考えられるのはストレスやクセ の他、噛み合わせや顎関節の問題 も考えられます。
これらの原因が複合的に歯ぎしりを引き起こしている可能性が高いので、それぞれの原因をひとつずつ丁寧に取り除くことが治療への近道です。
最近では「歯ぎしり専門外来」 「睡眠外来」 といった外来も増えてきています。日々新たな治療方法の研究も進んでいますので、歯ぎしりに悩んでいる方はぜひ一度歯科医院に相談してみましょう。