「臭い玉」 ってご存知ですか?くしゃみをしたり、「何かのどに詰まっているぞ?」と口をモゴモゴさせると出てくるらしい、あのゴツゴツした黄土色の物体。
臭い玉とは、扁桃の穴にできる球状の塊です。 少しでも潰すと下水やどぶのニオイを放ちます。臭い玉を出した経験のある人は、この悪臭がとてつもないレベルであることをご存知なはず。
そんな臭い玉を口内に抱えながら、会話をしていると思うとゾッとしますよね。「臭い玉=臭そう」というだけで、自分の口臭がひどいのではないか?と考えてしまう人も多いのではないかと思います。
実は、臭い玉は口臭の根本的な原因にはなりません。 臭い玉を無理やり取ろうとすると扁桃炎をおこしてしまう可能性があります。臭い玉をなるべく発生させないための体質改善を心がけることで、臭い玉の口臭は予防することができます。
この記事では、臭い玉の正体 からその発生する原因、口臭との関連性、ケアする方法 までお伝えします。読み終えた後には臭い玉の悩みから解放されて、快適な生活を送れるようになりますよ!
Contents
1. 臭い玉の正体
臭い玉はいったいどこからやってくるのでしょうか?実は、臭い玉の発生メカニズムは人間の免疫反応と関係があります。ここではその発生するメカニズム を紹介します。
1-1. 臭い玉とは?
臭い玉とは、扁桃のボコボコした部分にできる化膿物の小さな塊のことです。 白や黄色い色をしており見た目はチーズのようです。医学名称で「膿栓(のうせん)」 と呼ばれていますが、潰すと非常に臭いことから俗称で「臭い玉(くさいだま、においだま)」 と呼ばれています。
臭い玉は、死滅したウイルスや細菌の塊、食べカス、扁桃組織であるリンパ球や白血球、免疫反応による炎症性崩壊産物(タンパク質)、リン酸石灰、肪酸、コレステリンなどで形成されています。バクテロイデスという腸内悪玉菌も多くみられ、1mm程度の臭い玉の中には1億~2億もの細菌がいる と言われています。
1-2. 発生する原因とメカニズム
喉の奥には扁桃と呼ばれるリンパ球の集合体 があります。人間の体内には、鼻や口から気管を通じ肺に向かって常に病原体やウイルスが入ってきます。この扁桃が口や鼻から侵入した細菌・ウイルスと戦う役割を果たしてくれます。
扁桃には細菌を効率よく死滅させるためにボコボコしている部分があります。ここに侵入してきた細菌やウイルスと戦った扁桃組織の炎症産物や、食物のカスが白くなって溜まります。これが臭い玉の正体 なのです。
2. 臭い玉ケアのポイントは「口内の乾燥」
臭い玉が口臭を招くのではないか?と気になる方は多いのではないでしょうか。
臭い玉は人間の免疫反応で発生するものなので、誰でも発生する可能性があります。 とはいえ、「臭い玉=臭そう」というイメージで臭い玉を直接取り除こうとするのは、かえって逆効果。 臭い玉が発生する根本的な原因に対処していくことで口臭は予防することができます。 ここでは臭い玉と口臭の関係、 予防のヒント をお伝えします。
2-1. 臭い玉は口臭の根本的な原因になるとは限らない
臭い玉自体はとても臭いため、口臭の原因になるのではないかと思われがちです。ですが臭い玉そのものは根本的な口臭の原因になるとは考えづらいです。なぜなら、臭い玉は潰さない限り悪臭が発生することはありません。 そして、臭い玉は人間の免疫反応で発生するもので、誰でも口の中に持っている可能性が高いです。しかし、多くの人々は食事の際など食べ物が喉を通過するときに一緒に臭い玉も流れてしまうといいます。
臭い玉は口臭の根本的な原因にはなりえませんが一方で、臭い玉ができやすい口内環境は口臭が発生しやすい口内環境でもあるのでその意味で注意が必要です。 また、臭い玉を無理やり取ろうとすると扁桃の組織に傷がつき扁桃炎になってしまい、臭い玉が増えるキッカケになり、かえって逆効果 です。けっして無理矢理取ろうとはしないで下さい。
2-2. 臭い玉は口内が乾燥しやすい人にできやすい
臭い玉ができやすい口内環境を改善することが、口臭を予防することにつながります。臭い玉は口内が乾燥しやすい人にできやすいです。口内の乾燥は臭い玉の発生の原因になり、臭い玉と同じニオイの口臭を招きます。
臭い玉が持つドブのようなニオイは、寝起きや空腹時などに感じるニオイと同様のものです。寝起きや空腹時にはだ液の分泌が少なくなり口内が乾燥し、口内の菌が増えます。 その菌がたんぱく質を分解する時にドブのようなニオイのガスを発生させます。
1-2. 「発生する原因とメカニズム」で説明したように、口内が乾燥して細菌が増えると、扁桃がその細菌と戦うため、臭い玉が炎症物として発生します。つまり口内が乾燥すると、口臭が発生し、同時に細菌や臭い玉が増加します。
2-3. 口内の乾燥を抑えれば、臭い玉が発生しにくくなり、口臭も低減する
普段から口呼吸 をしていたり、ドライマウス体質 で口腔内が乾燥しやすい人 は、細菌が繁殖しやすくなるため寝起きの時のような口臭を慢性的に持っています。 これらの人々の口の中は細菌が繁殖しているため臭い玉ができやすい環境です。
そのため臭い玉を減らすには臭い玉を無理に取り除くのではなく、根本的な原因である口呼吸やドライマウス体質を改善させることが大事です。 体質改善し、口内の細菌を減らすことで口臭を低減させることができます。
3. 臭い玉ができやすい人
臭い玉は飲食をする際一緒に体内に流されてしまったり、くしゃみや咳とともに吐き出してしまうことも多いので、その存在に気がつかないこともよくあります。
しかし、前章でもお伝えしたように臭い玉ができやすい人 がいます。それは口呼吸をしている人とドライマウス体質の人 です。その理由を以下でお伝えします。
3-1. 口呼吸をしている人
鼻呼吸を行っている場合 、鼻の粘膜が細菌などの異物の進入を防いでくれます。しかし、口呼吸の場合 は細菌やほこりを直接のどや気管に吸い込むことになり、臭い玉を生む原因になります。
また口を開けっ放しにしていることで、口の中が乾きやすくなり、だ液の分泌も減ってしまいます。だ液には抗菌や殺菌の作用があります。だ液が減ってしまうと細菌が増えやすくなります。そして口内の細菌が増えることで臭い玉ができやすくなります。
3-2. ドライマウス体質の人
ドライマウス とは、薬やストレスの影響でだ液が出にくくなり、口が渇いてしまう病気 です。ドライマウスになると、口呼吸同様に、抗菌・殺菌作用をもつだ液の分泌が減ってしまいます。その結果、口内の細菌が増えてしまい、臭い玉ができやすくなります。
4. 臭い玉の軽減にもつながる!口臭をケアするための2つのポイント
ここまで臭い玉が誰にもできるもので、口呼吸やドライマウス体質の人は臭い玉ができやすく、口臭が発生しやすいことをお伝えしました。そのため臭い玉の発生を抑え、口臭を改善するには、口腔内が乾燥しやすい環境を改善することが大事 になってきます。
この章では、口腔内の乾燥を抑え、口臭が発生しにくくなる方法 をお伝えします。これを実践することで臭い玉発生を予防 することができます。
4-1. だ液を出す
だ液には抗菌・殺菌の作用 があります。そのため、だ液を出すことで、口腔内の細菌の繁殖が抑えられ口臭や臭い玉発生を抑えることができます。
(1) よく噛む
ご存知かと思いますが、モノを噛めば噛むほどだ液が出てきます。早食いの人は特にしっかりと食べ物を噛み砕くことを意識してみましょう。
だ液には口内の食べかすをきれいに流す効果 もあります。細菌のエサになる食べかすが口内から減ることでも、口臭を減らすことができます。
(2) だ液がでやすい食べ物を摂る
よく噛むだけでなく、だ液がでやすい食べ物を選びましょう。 だ液がでやすい食べ物は以下の3つです。
- レモンや梅干など酸っぱい食品
- 昆布(ヒヤルロン酸やアルギン酸は口腔内を保湿する働きがある)
- 納豆(ポリグルタミン酸がだ液を持続的に分泌する働きがある)
(3) だ液腺マッサージをする
お口の中には「だ液腺」と呼ばれる、だ液の出やすいポイントがあります。そこをマッサージで刺激してあげることで、だ液の分泌を促進することができます。
【やり方】
【図1】耳下腺マッサージ 人さし指から小指までの4本をほおと耳たぶの間にあて、奥から前へ円を描くようにマッサージ
【図2】顎下腺マッサージ 耳の下から顎下まで、顎の内側を指先を使って何箇所か押すようにマッサージ
【図3】舌下腺マッサージ 両手の親指を揃え、顎の真下から舌を突き上げるようにゆっくりとマッサージ
図1~図3を3周ほど繰り返すと、だ液が口の中にじわっと広がっていきます。
4-2. 口呼吸を治す
口呼吸は、口内を乾かしてしまう行為です。まただ液の蒸発を促進してしまい、細菌が繁殖しやすい環境を作ってしまいます。口呼吸を改善させるためには、「口や舌の筋力を強化すること」「鼻呼吸をするクセをつけること」 が大事です。
(1) ペットボトルトレーニング
口の周りには、口を閉じたり尖らせるときに使う「口輪筋」 と呼ばれる筋肉があります。この筋肉が衰えてしまうと口を閉じていることが難しくなり、口が自然に開いてしまいます。
【ペットボトルトレーニングの方法】
- ペットボトルに100〜200ccの水を入れて蓋を閉める。
- 歯を使わずに唇でペットボトルをくわえる。
- 10秒キープする。
2~3を5回繰り返す。
このトレーニングで口輪筋を鍛えるには、毎日実施することが大事です。テレビを見ながらなど数分間で簡単にできる方法ですのでぜひ毎日試してください。
(2) 舌トレーニング
口呼吸の人は唇が開いているだけでなく、舌が正しい位置についていません。舌の正しい位置は、舌が上あごについている状態です。舌が下あごの歯についている場合は、舌の筋肉が弱っています。舌の筋肉を鍛え位置を正すことで口呼吸から鼻呼吸に変えることができます。
このトレーニングは、口を閉じたまま行うことができます。舌トレーニングを行うと舌の筋肉が強化されるだけでなく、だ液が生成され、口の中が潤います。
【舌トレーニングの方法】
- 口を閉じた状態で舌を上前歯と唇の間にいれる。
- 口を閉じたまま舌を時計回りに回す。右頬の内側を舌でなぞりながら下の歯と唇の間に入れる。
- 下の歯と唇の間から左頬の内側を舌でなぞりながら上前歯と唇の間に戻す。
1~3を時計回りに10周、反時計回りに10周、合計20周を毎日行うのがおすすめです。
(3) ガムを噛んで咀嚼筋をアップ
「咀嚼筋」はその名の通り、モノを噛むときに使う筋肉です。咀嚼筋をアップさせ、モノをしっかり噛む習慣がつくとだ液の生成が促進されるので口臭抑制にも効果があります。
ガムを噛むことで咀嚼筋はアップさせることができます。噛む習慣をつけるためには1日2回程度、20分噛み続けるのがおすすめです。
(4)マスクを着けて鼻呼吸をする癖をつける
口呼吸が癖になっている場合は、口の周りの筋肉を鍛えた場合でも無意識的に口が開いてしまっていたり、睡眠時に口呼吸をしてしまっている場合があります。そのため、呼吸の意識を口呼吸から鼻呼吸へ変えていくことが大切 です。その一つの方法としてマスク を活用しましょう。
マスクを濡らして、鼻だけ出すことで口呼吸ができなくなるため、鼻呼吸の練習になります。
(5) 睡眠時にはバンドエイドで鼻呼吸に切り替える
睡眠中は口呼吸になりやすいため、バンドエイドをつけて寝ることをおすすめします。縦に貼ることで口が自然に開くことを防ぎ、鼻呼吸に切り替えることができます。
(6) 鼻がつまっている場合、鼻の周りをツボ押し
鼻が詰まっていて、鼻呼吸ができない場合 は、鼻の周りのツボを押すことで鼻の通りがよくなります。
- 晴明 鼻の付け根の両わきにあります。人差し指で優しく押しもみます。
- 迎香 小鼻の左右の膨らみのわきにあります。人差し指で優しく押しもみます。
- 晴明から迎香の間を人差し指で上下にさすります。
アルコールの入っていない洗口液を使うことで口内の細菌を減らすことができます
口臭や臭い玉を生む原因は、口腔内の細菌でした。根本的な治療ではありませんが、洗口液 を使ってしてあげることもおすすめします。そうすることで口内が清潔に保たれ、口臭や臭い玉の発生を減らすことができます。殺菌するためには、アルコール(エタノール)の入っていない洗口液を使うことをおすすめします。アルコールが入っているとかえって口内の乾燥が促進され、だ液が減少したりする場合があるためです。
5. おわりに
いかがでしたでしょうか?
臭い玉は人間の免疫反応で、誰にもできるものです。 その中でも臭い玉が発生しやすい人は、口が乾燥しやすく細菌が繁殖しやすい口内環境の人です。細菌が繁殖すると臭い玉だけでなく、口内全体で臭いが出やすくなります。
臭い玉や口臭を発生させないためにも、細菌を減らすために口呼吸やドライマウスを改善したり、だ液を出す環境を作ってあげることが大事です。ぜひ今回ご紹介した各種トレーニングやマッサージを実践して、臭い玉が出やすい体質改善 を行いましょう。
参考文献
・Relationship between the presence of tonsilloliths and halitosis in patients with chronic caseous tonsillitis. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18037821
・Tonsils and Bad Breath Therabreath http://www.therabreath.com/tonsil-bad-breath.html
・Are Tonsil Stones the Reason for Your Bad Breath? http://articles.mercola.com/sites/articles/archive/2015/07/15/tonsil-stones.aspx#_edn4